Ni-Ti合金の諸特性
3. NiTi合金の諸特性
3.1 物理的特性
表1に代表的な物理特性値を示す。この合金は温度と共に(特に変態に伴って)特性が変化するので,状況に応じて選定する必要がある。その一例として,図18に、結晶の構造変化伴って、即ち変態に伴って、電気抵抗が変化する様子を示した。
3.2 機械的特性
表2には,一般的なNi-Ti合金の引張強さと伸びを示した。表に記されていないが降伏点は、マルテンサイト相で50~200MPa、オーステナイト相では250~600MPa、オーステナイト相のヤング率は40~80GPaである。図19には応力-ひずみ線図の一例を示した。また,降伏点の温度依存性を図20に示す。温度がAf点を越えると超弾性があらわれ、白丸は負荷時の降伏応力、黒丸は除荷時の回復応力を示している。
3.3 化学的特性
Ni-Ti合金の耐食性は基本的に良好である。ただし、特殊な厳しい環境では注意を要する。高濃度のHCl等には、侵されることがある。Ti合金と同様に水素を吸収して、脆化する。また、海水、塩水にも比較的安定であるが、異種金属と接触する環境では、他の金属同様に電位差腐食が発生するため、注意を要する。Niイオンの溶出については、環境にもよるが、SUS304系と同等か、より少ない溶出量を示す。用途によって、あらかじめ使用される環境を検討することが必ず必要である。