医療用途向けTi-Ni合金の介在物制御技術の開発

Ti-Ni合金(NT合金)は,超弾性によるしなやかな特性や耐食性,生体適合性に優れることから医療デバイスに用いられています.このうち生体内に留置するものには,拍動などの繰り返し変形が加わるため,耐疲労特性が求められています.一般的な金属材料と同様に,NT合金にも介在物が存在し,疲労破壊を起点になることが問題視されています.
当社では,耐疲労特性を向上させるために,製品に内在する介在物について大学と共同研究を行ってきました.この成果として種々の介在物の中でも破壊の起点になりやすい介在物相があることを特定しました.この有害な介在物相をなくすことで,疲労特性が向上することがわかりました.
これを製品で実現するために,合金成分の制御や加工技術を組み合わせることで,有害な介在物がない製品を商業規模で生産できるようになりました.

Ti-Ni合金細線を用いた回転曲げ疲労試験の結果
(図中の表記は試料に内在する介在物相を示す)

当該技術についての学術論文

"Effect of nonmetallic inclusions on fatigue properties of superelastic Ti-Ni fine wire"
F. Yamashita, Y. Ide, S. Kato, K. Ueda, T. Narushima, S. Kise, K. Ishikawa, M. Nishida
Metals, 9 (2019) 999.
https://doi.org/10.3390/met9090999

"Effect of C/O Ratio on Phase Change and Stability of Inclusions in Ti–Ni Alloys Fabricated by a Commercial Production Process"
Fumiyoshi Yamashita, Yasunori Ide, Hiroshi Akamine, Kouji Ishikawa, Minoru Nishida
Shape Memory and Superelasticity, 6 (2020) 354-364.
https://doi.org/10.1007/s40830-020-00302-1

Cu-Al-Mn超弾性合金の長尺単結晶化と接合技術の開発

形状記憶合金(以下超弾性合金)の大きな変形を加えても,除荷すると元の形状に回復する性質を耐震技術に利用するアイデアは以前からありましたが,Ti-Ni合金(NT合金)では,加工性が乏しいため太い部材への適用が難しく,変態臨界応力(見かけ上の降伏応力)の温度依存性が大きいため,建築・構造部材への応用は現実的ではないと考えられてました.
東北大学が状態図の研究から見出した加工性に富み,温度依存性の小さいCu-Al-Mn合金(キャマロイ)は耐震材料に適していると考え,当社は大学の研究者と共同で,巨大地震時に想定される大変形による粒界壊のリスクに対し,金属組織制御を駆使したサイクル熱処理法による単結晶材作製技術を開発し,超弾性から塑性変形・破壊に至る過程で,耐震部材に適した破断伸びを示す結晶方位を特定しました.
また建物の一部を超弾性部材にすることで,地震時に超弾性部材だけが変形し建物全体の損傷を最小限にすることが可能になりますが,キャマロイと他の部材とを繋ぐ方法が必要になります.キャマロイ特有の単結晶化焼入れ時の低い規則度から,時効処理により規則度を上げ良好な超弾性になる現象に着目し,一般的には難しいと考えられる超弾性材の転造ねじ加工の開発に成功しました.転造ねじは表面に強い圧縮応力を付与させることで高い強度も持つため,写真のように両端に転造ねじを配置したキャマロイ部材をひずみ50%以上の変形を与えても破断せず,しかも低コストで加工が出来るため実用的な接合技術と考えられます.

当該技術についての学術論文

"Ultra-large single crystals by abnormal grain growth"
T. Kusama, T. Omori, T. Saito, S. Kise, T. Tanaka, Y. Araki, R. Kainuma
Nature Communications, 8 (2017) #354
https://doi.org/10.1038/s41467-017-00383-0

"Orientation Dependence of Plasticity and Fracture in Single Crystal Cu-Al-Mn Alloy Bars"
S. Kise, Y. Araki, T. Omori, R. Kainuma
Journal of Materials in Civil Engineering, 33(4) (2021) 04021027.
https://doi.org/10.1061/(ASCE)MT.1943-5533.0003568.

"Feasibility of roll threading superelastic Cu-Al-Mn SMA rods"
S. Kise, N. Kataoka, R. Takamatsu, M. Nishida, T. Omori, R. Kainuma, Y. Araki
Journal of Materials in Civil Engineering, 33(9) (2021) 04021254
https://doi.org/10.1061/(ASCE)MT.1943-5533.0003874.

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